映画版ネコナデ
仕事ひと筋の堅物オヤジが、とびきり愛らしい子ネコにほだされていくという『映画ネコナデ』。本作は、小木茂光主演の連ドラで好評を博した「ネコナデ」の劇場版ですが、こちらの主演は亡き名優、大杉漣が務めています。大杉さん演じる鬼塚太郎が醸す、がむしゃらな企業戦士の哀愁が、たまりません。
彼は、倒産寸前の会社を立て直そうと、冷徹なコストカッターとして、リストラを実行していく鬼の人事部長でした。太郎は「まじめか!」とツッコミを入れたくなるほど、会社のために身を粉にして尽くす清廉潔のサラリーマンで、家でも決して羽目を外さない生真面目な頑固者。でも、内心は、リストラをすることで、心を痛めていました。そんななか、夜の公園に捨てられていた1匹の子ネコに出会います。会社の研修用のマンションで、こっそりと子ネコを飼い始めた太郎ですが、なんとも愛くるしい子猫が、彼の頑なな心を解きほぐしていきます。
とにかく子ネコの無防備な表情が胸キュンで、ネコ好きならずともメロメロになりそうです。
監督は、朝ドラ「あさが来た」や、2021年放送開始の吉沢亮主演による大河ドラマ「青天を衝け」を手掛ける脚本家としても知られる大森美香。ネコとの出会いで、自分の人生が彩られていく物語は、観ていてほっこり。折しもコロナ禍なので、太郎のように格闘しているサラリーマンが多いかと思うと、公開当時とは違う感慨も覚えます。
先生と迷い猫
『映画ネコナデ』と同様に、偏屈なおじさんとネコとの交流を描く物語ですが、こちらは、ただのヒューマンドラマという枠に収まる作品ではないんです。
地域猫の三毛猫ミーちゃんと人々の交流を描くノンフィクション「迷子のミーちゃん~地域猫と商店街再生のものがたり」を原案にした本作。
イッセー尾形演じる主人公の森衣恭一は元校長先生ですが、近所でも浮いている変わり者で、妻を亡くしてから一人暮らしをしています。恭一の家に毎日やってくるのが、亡き妻が可愛がっていた地域猫のミーちゃん。最初は、妻のことを思い出すからと、邪険に追い出していた恭一ですが、やがてミーちゃんに癒やされ、姿が見えなくなると、必死に行方を探そうとしていきます。
いつしか、先生のミーちゃん探しは、町の人々をも巻き込み、気がつけば、交流の輪がどんどん広がっていきます。ところが本作では、琴線を揺らす感動の物語と裏打ちするように、ある男の子の孤独さや心の闇が挿入され、観終わったあと、なんとも心がざわめきます。
監督は「神様のカルテ」シリーズの深川栄洋監督です。ネコがつなげてくれた人と人とのかかわりを、優しい目線で描いていますが、それとは別に、哀しい現実をも突きつけてきます。ネタバレは避けますが、そこは、私たち人間が目を背けてはいけない出来事です。動物愛護週間ということで、ぜひ観てほしい1作です。
猫が教えてくれたこと(字幕版)
トルコの古都・イスタンブールで暮らす個性豊かなネコたちの“ネコ生”を描く1本です。タイトルに思わずうなずいてしまう、『猫が教えてくれたこと』というドキュメンタリー映画をご紹介。
市場の食べ物を狙う虎猫の「サリ」、なでられるのが大好きなメス猫の「ベンギュ」、ネズミ退治を仕事にしている「アスラン」、けんかが強いが嫉妬深い「サイコパス」、下町の市場に住む看板猫の「デニス」といった具合に、7匹の猫とイスタンブールの人々がふれあう日常が、生き生きと描かれています。
イスタンブールは、古くから“ネコの町”とされ、人間とネコが非常にバランスよく共存しているようです。日本で言うところの青島みたいな感じなんでしょう。野良ネコたちは、町の風景にすんなりと溶け込んでいて、非常にいい表情を見せています。
もふもふなネコたちのオンパレードに思わずにんまり。ネコに元気をもらい、その分を人間側からもお返しをする。とても素敵なふれあいのキャッチボールができていて、これぞ理想的なネコライフなのかなと思ったりもします。
参照:sippo
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